許嫁な二人
「良世ちゃん、来てたんだ。」
「うん、それでね。」
そう言いながら、良世は唯の手にネックレスをにぎらせた。
「これ、、、。」
それは、透の部屋で一晩すごしたときに、置いてきてしまったものだ。
「透くんにこれを唯に渡してくれって頼まれたの。」
「透くん、きてるの?」
「うん、でも、もう帰るって言ってた。今晩のうちに
東京へもどるって。」
心臓がトクトクと鳴りはじめたのを唯は感じた。
祭りに来ていながら、逢わずに帰ろうとするなんて、、、、。
唯のネックレスを良世にたのんでまで、返そうとするなんて、、、。」
胸がざわざわとして、唯はネックレスをきゅと握ると良世に尋ねた。
「透くん、何時の電車にのるとか言ってなかった?」
「そこまでは聞かなかった。でも、わかれてからずいぶん
時間たってるよ。」
もう、そこに立っていることはできなかった。
唯は上衣だけをぬぎすてると、白い着物に緋色の袴の姿のままで
そこをとびだした。