許嫁な二人

 いつもは、キッと尻上がりになっている眉が、眠っている時は
 ゆるやかな弧を描いたようになって、そこに子供の時の
 面影を見つけられるような気がして、
 唯は眠っている透の顔を見るのが好きだ。

 しげしげと眺めて、



   「透。」


 と呼んでみるが、透は目覚めない。

 今までずっと”透くん”と呼んできたのに、いつまでも小学生のようで
 いやだ、と透にいわれ、”透”と呼び捨てするようになった。

 唯としては、慣れた”透くん”の方がいいのだけれど、仕方がない。

 ”透”ともう一度、呼ぼうとしたところで、くしゃんと小さなくしゃみが
 でた。

 途端に透が目を覚まして、



   「なんだ、風邪か?」



 と聞いてくる。

 名前をよんでも起きなかったのに、くしゃみ一つで、この人は目覚める
 のかと思ったら、おかしかった

 昔から、透は唯の体調を気にしすぎる。

 唯が首をふりながら、かすかに笑ったのを見咎めて、透が
 じろりと唯を睨む。

 そして、



   「風邪じゃないなら、いいよな。」



 と言って、身を乗り出すと、唯の首筋に顔をうめてきた。
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