雨のようなひとだった。
俺も彼女も狡くて弱くて、傷つけたり傷ついた自分や何かから逃れたくて身を寄せた。
失くした何かを埋めることのできる代わりを互いに求めていた。
似た者同士だったんだ。
静かな雨の音だけが満ちた部屋で二人きり。
水の中に漂っていたようなあの感覚を“息がしやすい”と表現するなら、まさにそれだった。
他の誰かに理解してもらおうとは思わない。
言い訳しようとも思わない。
俺と彼女だけの特殊な関係は、確かにあった。
珍しくミルクを加えたアイス珈琲をストローでかき混ぜて外を眺める。
今日は雲ひとつない青空だ。
当分晴天が続くと天気予報でもいっていた。
彼女と次に逢える日もきっと、雨だろう。
【雨のようなひとだった。】完

