雨のようなひとだった。

「何がです?」
「えっと…まだ火をつけたばかりだったみたいなので。勿体ないかなって」
「あーなんだそんなこと。大丈夫ですよ」

 申し訳なさそうに俯く彼女の肩を一度だけ軽く、ぽんと叩く。
 彼女は一度も『煙草が嫌い』だとか『吸わないでほしい』なんて言った事はない。
 俺が勝手にやめているだけだ。
 だから彼女が申し訳なく思うことは何ひとつない。

「俺昔ヘビースモーカーだったんで、最近控えてんですよ」
「そうなんですか?」
「代わりに飲む珈琲の量はむちゃくちゃ増えましたけどね」
「ええ?そうだったんですか?」

 からからと笑ってみせれば、彼女も俺につられて笑ってくれる。
 今言った事は少しだけ嘘があるけど、全部じゃない。


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