雨のようなひとだった。
トタトタと俺よりも軽くて歩幅の狭い足音が、狭い廊下を歩いていく。
それに未だ慣れずにいる。
手を伸ばせば届く距離に居るのに、つかまえてしまったら最後するりと俺の元から消えてしまうんじゃないか、なんてらしくない不安ばかりが募っていた。
今も何ら変わっていない。
微かに揺れる小さな手の指を絡めてしまった今、きっともう一緒に居られる時間は長くないとわかっていた。
だからもう、後悔はしたくない。
「マキさん」
「……え?あっ、はい、何で」
答えるために捻りかけた彼女の身体から伸びた腕。
細い手首を掴んで、戸惑いの声をあげた彼女を無視して俺は向かった。
一度も入れたことのない、俺の部屋へ。