雨のようなひとだった。
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帰り道、一度も絡めたことのない指を絡めた。
玄関に入ると細い手首を引き寄せて、一度も抱きしめたことのない身体を抱きすくめた。
意地悪を言ったところで恰好がつかなくて、抱きしめるのは平気だったくせに反撃を仕掛けられたら慌てふためいて格好悪いところしか見せられなかった。
思えば同居に誘った時が一番恰好悪かったわけだ。
なら全てが今さらで、きっと彼女も俺には期待も何もしているわけがなかった。
そう考えたら、肩の力が抜けた。
「……ちょっとはドキッとしたり緊張とか、してくれました?」
俺の部屋の、狭いベッドの上。
腕の中に居る彼女の耳元へそっと囁く。
せめて色っぽさを感じてくれたらと声を落としてみたけど、彼女にはきっと通じない。