雨のようなひとだった。

「……結城ー」
「何」
「“息がしやすい”って、どういう意味なんだろうな」
「あ?」

 彼女は俺をそう喩えた。
 どういう意味なのか訊ねることなく彼女は俺の前からもマスターの前からも姿を消してしまったし、本当の意味で理解出来るとも思っていない。

 俺なりに考えてみたけど、何せ俺は頭が悪い。
 酸素みたいってこと?
 それって結局どういう意味?と結局わからないままだ。

 結城は呻るように珈琲を飲み、「俺の見解だけど」と切り出した。

「癒されるとか潤うとかそういう意味じゃね?」
「……癒される?潤う?」
「観葉植物に霧吹きかけてる時に『息しやすくなったかー?』って話しかけたりするもん俺」
「霧吹き……」
「あ、観葉植物と会話する点にツッコミはねーのね」

 その後も延々と可愛い観葉植物についての話をしているらしい結城の声が耳をすり抜けていく。


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