Time Paradox
この日の夜、ジャックはルクレツィアに呼び出されていた。


「ジャック、もう夜ご飯は済んだ?」

「いや、どうしようかと思ってたところなんですけど…」

「ちょうどいいわ、食べに行きましょう?」

ルクレツィアがジャックに腕を絡めたが、そのことに関してジャックは何も言わなかった。


「最近はいつもジャックのお店に食べに行ってたから…ジャックがいいならあのレストランでもいいんだけど…どうしようかしら?」

ジャックはしばらく考えたが、ルクレツィアと一緒なら確実に店長達の冷やかしのシャワーを浴びることになるだろう。

「…ルクレツィアさん、サンドイッチはお好きですか?」

ルクレツィアが頷くと、ジャックは早速サンドイッチ屋の行列に並び、ルクレツィアもすぐさま隣で腕を絡める。

「そうね、外で食べるのも悪くないわ!」


ジャックがお金を払い、2人分のサンドイッチを受け取ると、川辺のベンチに腰掛けた。

しばらく2人はモンフォワーシュ名物のサンドイッチを頬張っていたが、ある程度空腹が満たされてきた頃、ルクレツィアは言いにくそうに口を開いた。

「気になることがあるんだけど…ジャックは、その…リリアーナさんと付き合ってないわけでしょ?それならどうして定期的に逢瀬を繰り返していたのかしら?」

「それは…何でなんだろうなぁ…。」

ジャックはルクレツィアの質問に歯切れの悪い反応を見せながらも、手にしていたサンドイッチを全て胃袋の中に詰め込んだ。

「…何か目的があるとかって言うのなら分かるけど。だって、お互い特別な感情はないんでしょう?」

ルクレツィアも気にしていない素振りを見せているのか、お上品にサンドイッチを完食した。


ジャックはしばらく考えてから、重い口を開いた。

「…いや。やっぱり会えるんだと思うと嬉しいし、ずっと会えないと落ち着かないって言うか…」

「…それって…」

「これが恋愛感情とかそういうものなのかって言われるとよく分からないけど…アドルフ王子のことを未だに好きなんだろうかと思うとなんか…」

そこまで言ったところで、ルクレツィアはジャックの唇を塞いだ。

「…それ以上はもう…聞きたくないわ。」

ジャックを捉えるルクレツィアの深い紫色の瞳が、心なしか微かに揺れている。

「…彼女じゃなきゃ…ダメかしら?」

そこまで大きいわけではないが、いつもなら凛として通るルクレツィアの声が今は消え入りそうだ。

そしてジャックのシャツを掴むルクレツィアの両手が震えている。

女関係に鈍いジャックには、この一連の行動が計算であるものなのか本気なのかが分からなかった。

すると、ルクレツィアは向き合っていたジャックの胸にもたれかかった。
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