Time Paradox
モンフォワーシュ中にハンナ・ケインズとアドルフ王子の結婚の話が知れ渡った頃、城では夕食の時間だった。

国王や王妃、王子などと一緒に2人も食事をとる事になってしまった。

「父上が認めてくださって嬉しいです。ハンナ様が今日、この城に来て初めて再開する事が出来たのですから。」

アドルフはそう嬉しそうに言うと、マーカスの隣にいた王妃も口を開いた。

「私も嬉しいわ。アドルフが何度お見合いに参加しても結婚相手を決めないから心配していたのよ。でも、やっぱりアドルフはハンナ様でなくてはいけないのね!」

「クラリス、これから嫁になる人間に様を付けるのはよせ。」

ついリリアーナは、嫁になるという言葉に反応してしまう。

「…そうねぇ、家族になるんだものね。ハンナ、よろしくね!」

リリアーナは昔から、クラリス王妃の楽観的で呑気な所が好きだった。

「改めて、よろしくお願いいたします。」

「まぁ!改まらなくてもよろしくってよ!この人はこう言うけど、今まで通りだっていいんだから。」

そう言ってクラリス王妃は、眉毛を下げて笑った。

「…だけど、もしハンナが殺されていたら今回ばかりは許さなかったかもしれないわね。あの時も、私が権力を握っていたらあなたを地下牢にぶち込んだのに。」

そう言ってクラリスはマーカスに恨めしそうな目を向ける。

「クラリス、本人の前でその話はやめろ。」

「あらごめんなさいねぇ?でも、まだあなたを許したわけじゃないわよ?」

リリアーナには、クラリスがマーカスに軽く圧力をかけているように見えた。

少し険悪なムードになりかけた時、またアドルフが口を開いた。


「今日言おうと思ってたのですが、今週のアーノルド家の訪問にハンナ様もお連れしてよろしいでしょうか?」

「それはアドルフ、お前の仕事だ。連れて行くか行かないかは自分で決めなさい。」

「分かりました。」

アドルフは少しホッとしたような顔で言った。
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