季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
とりとめのない事を考えながら、いつもより多めのお酒を飲んだ。

酔いの回った頭で、これからどうしようかと考える。

とりあえず今夜はどこに泊まればいいだろう?

勢いで出てきたのはいいけれど、行く宛なんてない。

この店だって朝までやっている訳じゃないし、駅前のネットカフェにでも行ってみるか。

けれどなんだか、動くのが億劫だ。

大きな荷物を抱えて、千鳥足で一人夜道を歩く自分を想像して、情けなくなる。

だけど壮介と彼女が仲良く寄り添っているあの部屋には戻りたくない。

なんで私がこんな惨めな思いをしなくちゃいけないんだろう?

誰も支えてくれる事のない、行く宛のない体を冷たい壁に預けた。


「ずっと一人だね。どうしたの?酔った?」

見知らぬ男が隣の席に座った。

男は私の足元のボストンバッグを見て、ニヤニヤ笑う。

「もしかして家出?行くとこないなら、うちに来る?泊めてあげるよ。」

馴れ馴れしく肩に手を回して耳元で囁く男の手を振り払おうとしたけれど、酔いが回って力が入らない。

「ほら、かなり酔ってる。ね、悪いこと言わないからうちにおいでよ。」

誰が行くかと言いたいのに、頭がぼんやりとして、言葉も出なかった。

私が酔って抵抗できないのをいいことに、男は肩に回した手をするすると下の方に滑らせ、私の胸をまさぐった。

「俺んち行こう?荷物持ったげる。」

「や…めて…。」

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