季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
随分長い間壮介に求められなかった体は、私の意思とはうらはらに、好きでもない見知らぬ男の手に過敏に反応している。

「やじゃないんでしょ?俺んちおいでよ。もっと気持ち良くしてあげる。」

どうせ行く宛もない。

婚約者にさえ求められず、突然捨てられた自分を、今だけは誰でもいいから慰めて欲しいような、めちゃくちゃに壊して欲しいような気持ちになる。

今の私を必要としているのは、所詮性欲を満たしたいだけの、この程度の男しかいないんだ。

もう抵抗する気力すらない。


どうにでもなれ。


私は男に引きずられるように席を立った。




そこから先の事は、よく覚えていない。

目が覚めたら、見知らぬ天井の下で、毛布を掛けられて横になっていた。

昨日来ていた服をキッチリ着ている。

一体何が起こったんだろう?

ぐるりと見渡すとそこは、事務机とソファーが置かれた殺風景な部屋だった。

誰もいない。

ここはどこなんだろう?

うずくまってぼんやりしていると、誰かがドアを開けて入ってきた。

「目が覚めた?」

「ハイ…。」

その人は、バーのマスターだった。

「夕べは飲みすぎたみたいだね。変な男に連れて行かれそうになってたよ。」

「あ…。」

思い出すと恥ずかしい。

いくらやけになっていたとはいえ、知らない男について行こうとしてたなんて。

「ご迷惑お掛けしてすみません…。」

「いや、たいした事は何もしてないよ。うちのバイトくんが阻止して、ここに運んだだけだから。でも、次から気を付けるんだね。」

「ハイ…。」

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