季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
バカらしい。

壮介は、3年間一緒にいた私より、男受けしそうな顔のその女が好きなんだ。

同棲した2年間、毎日壮介のために料理を作って洗濯して掃除して、ワイシャツのボタン付けもアイロンもやってきた私より。

私と一緒にいても、そんな甘ったるい態度は取らなかった。

わかったわかった、よくわかりました。


私はわざとらしく大きな足音をたてて歩き、そのままリビングを突っ切って自分の部屋へ向かった。

「なんだ、いたんだ。」

“なんだ”ってなんだよ?

しかも“いたんだ”だって?!

二人の世界の邪魔をするなとでも言いたいの?


「早くも夫婦気取りで楽しそうね。」

「気取ってる訳じゃない。今日入籍したから本物の夫婦。」

「はぁっ?」

「新しい部屋が見つかるまで、ここに彼女も住むから。」

「ちょっと、なんで勝手に決めるわけ?」

「この部屋の賃貸契約者は俺だろ?元々、俺が住んでた部屋なんだし。とは言え今月末で引き払うから、朱里も早く新しい部屋見つけて出てって。」


信じられない。

壮介がこんなにも自分勝手で非常識な人だったなんて。

クローゼットから取り出したボストンバッグに手当たり次第に衣類や化粧品を詰め込んだ。

「どんだけ無神経なの?!言われなくても出てくよ!バカ!!」

「残りの荷物、ちゃんと取りに来いよ。」


私はボストンバッグを手に部屋を出た。

行く宛もないのに。





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