季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
ボストンバッグを肩に掛け、仕方なくさっきのカフェに向かった。

夜になるとそのカフェは、バーに変わる。

会社帰りに何度か寄った事がある。

バーなら遅くまで営業しているはずだし、こんな有り得ない状況に置かれた今、とてもシラフではいられない。

お酒でも飲みながら今後の事を考えよう。

バーに入ると、まずはボストンバッグをジロジロ見られた。

こんな大荷物、邪魔だと思われるか、もしくは家出と勘違いされるかのどちらかだ。

どうしようかと思ったけれど、とりあえずカウンター席の足元に押し込んで、モスコミュールとチキンバスケットをオーダーした。


さて、どうしたものか。

結婚の話は白紙になったとまずは両親に報告しなくちゃいけない。

それから招待客にも、結婚式を中止しますと連絡しなくては。

これから住むところも探さなくちゃ。

結婚式場に支払った内金は半分以上が壮介のお金だったけれど、私だって支払ったんだから、壮介の事情でキャンセルした訳だし、請求してもいいはずだよね。

それがないと、新しい部屋を借りる事もできない。

両親になんと言おうか。

私の結婚をあんなに楽しみにしていたのに。


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