季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
モスコミュールをもう一杯オーダーして、グラスを傾けながら策を練る。


『壮介の父親が大病を患い、結婚を延期する事になりました。とりあえずお詫びも兼ねて親戚の皆さんにご挨拶だけでも…。』

これでどうだろう?

あとは何食わぬ顔で偽壮介と一緒に、両親や親戚と食事をすればいい。


よし、決めた。

そうとなれば早速、偽壮介を見つけなくちゃ。

どうせなら、モテそうなイケメンがいいな。

そうすれば“壮介の浮気が原因で離婚した”と言いやすいかも知れない。


本物の壮介は、見た目は可もなく不可もなく、どこにでもいそうな普通の男だ。

遊んでいるようでも、特別モテそうでもないのに、私の知らないうちに浮気していた。

その浮気が本気になったというわけだ。


そもそも、どうして私は壮介と付き合い始めたんだったっけ?

確か当時の派遣先の社員に、人数が足りないと合コンに誘われ、珍しく参加した。

そこで壮介と出会って、なんとなく話が合ったのがきっかけだ。

特別好きとかいう感情があったわけじゃないけれど、その場の流れでまた会う約束をした。

二人だけで会っても、それこそ可もなく不可もなく、なんとなくまた次も会う約束をして、それが何度か続いた。

気が付けばいつの間にか、どちらからともなく付き合っていると認識していた。

思い起こせば、始まりなんてそんなものだ。


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