思いがけずロマンチック

午後からの私は、明らかに浮かれていた。

有田さんが、私の作ったお弁当を食べてくれたことが嬉しくて。まったく単純な性格だ。


初めて誰かのためにお弁当を作った。高校の同級生の中には彼氏のためにお弁当を作っていた子もいたけれど。私にはまったく無縁だった。誰かのために作ってみようと思ったこともない。

何だか嬉しいやら恥ずかしいやら、変な気持ち。


「唐津さん、ちょっとだけ……ここ直してくれる? それと文章を差し替えて」


益子課長からの面倒な依頼も、今なら嫌な顔せずに受けることができそう。
と思ったけれど、そうでもなかった。


「これは午前中に直しましたよね? また元に戻すということですか?」

「そうなんだ、悪いね、僕はこのままでいいと思うんだけど、本社がダメだって言うんだよ」


新社内規則の文章の表現や言い回しで、もう何度書き直したことか。毎回同じ箇所ばかりだから腹が立ってくる。


しかも有田さんにチェックを受けて問題ないと言われても、本社から修正するようにと益子課長に直接指示が来るからややこしい。



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