思いがけずロマンチック

「段ボールの持ち主を捜しましょうか?」


つい言ってしまった。黙っていればいいものを……と心の中で引き止めるもうひとりの自分がいる。その手を振り払い、さらに一歩前へと進み出た。



「持ち主がわからないものは思いきって処分してしまったら、かなり減ってスッキリすると思います」


有田さんの顔色が僅かに明るくなる。

もしかすると有田さんは待っていたのかもしれない。私が自ら進んで、この雑務と思える仕事を引き受けるのを。


「そうだな、思いきりが必要だが強行手段でもやむを得ないかもな」

「個人持ちの資料は自分の机か事務所のキャビネットに収まるのを限度に、残りは電子化したら保管場所を確保しなくていいです」

「個人の机も片付けられるからいいだろう、容量を増やさないといけないな」

「はい、個人で保管している資料の中でダブっているものもあるはずなので、社内で共有すれば容量も減ります」


自分でも不思議なほど、次から次へと言葉が溢れてくる。けんか腰ではなく言い争いでもなく、こんな風に有田さんと話すことができるなんて思わなかった。
普通に話したら、ちゃんと伝わるじゃないか。




< 107 / 228 >

この作品をシェア

pagetop