思いがけずロマンチック

「手が空いた時に取り掛かってもらえるか? 悪いが事務用品の台帳管理も進めてくれ」


実質私の負担が増えるのはわかっているけれど、それでもいい。有田さんが真剣に耳を傾けてくれるから私も真剣に考えたいし、何か役に立ちたいと思える。まるで秘書という名を借りた雑用係だとしても今は構うものか。

有田さんをゲットするためのプラス要素になるのなら、今は喜んで引き受けよう。


「わかりました、すぐに取りかかります」


無意識のうちに語尾が上がってしまう。
照れ隠しのつもりで積み上げられた段ボール箱の山から飛び出た角を押し込んでみる。
すると押し込んだはずの段ボール箱があらぬ方向へと傾いた。


「バカ、何してるんだ」


有田さんの声に反応して、両手を挙げて押さえようとしたけれど既に手遅れ。バランスを崩した段ボール箱が他の段ボール箱を巻き込んで落ちてくる。しかも蓋が閉まっていないものだから中身をぶちまけながら。

とっさに手で頭をガードして、降ってくるものを想像しながら歯をくいしばった。


ドサドサと床に叩きつけられるファイルや本の音が耳に響いた。覚悟していた頭への直撃は免れたらしい。


そっと頭を上げると視界が暗い。

私の前に立ちはだかっている壁は有田さん。私に直撃するはずの段ボール箱を受け止めてくれている。段ボール箱の中身は見事に足元に散らばっていた。


< 108 / 228 >

この作品をシェア

pagetop