思いがけずロマンチック
大急ぎで修正を済ませたら有田さんはご満悦。見たことない笑顔と労いの言葉を残して、本社へと出かけて行った。
ほっとして、修正作業と資料整理で散らかった机を片付け始める。ところが机の端に山積みになっていた書類に肘が当たって崩れ出す。引き止めようと伸ばした手が書類を弾いて、意図しない方向へと流れていく。
益子課長の机上に置いてある書類をも巻き込んで、書類は床へと散らばってしまった。
幸い益子課長は休憩中で席に居ない。今のうちに片付けてしまおうとすぐに屈み込んだ。
ところが、
「あーもう、何してんだよ……」
運悪く益子課長が休憩から戻ってきたらしい。ちょうど見られてしまうなんて、ついてない。
「すみません、手が滑って……すぐに片付けます」
慌てて書類をかき集める頭上から、益子課長の大きな溜め息が聞こえてくる。情けない気持ちで集めていると、書類の一枚に目が留まった。
これは、さっき私が修正した書類のうちの一枚。朱書きで修正が書き込まれていないし、穴あけしてあるということはファイルに挟むはずだった一枚のはず。
なぜ、こんなところにあるのかがわからない。
「貸してみなさい」
疑問を解決できずにいる私の手から、益子課長の用紙を取り上げようとする。
とっさにかわしたら、すごい形相で睨みつけられた。