思いがけずロマンチック
「これは、有田さんが本社に持っていった書類ですよね? どうして一枚だけ残ってるんですか?」
聞かずにはいられなかった。
表紙や最後の一枚ならともかく、真ん中から一枚だけ抜けるなんてあり得ない。しかも全ページ揃えて部数を指定して刷ったのだから、一枚だけがどこかに紛れ込むなんて考えられない。
嫌な予感を抱きつつ益子課長を見据えると、ふいと目を逸らして手を泳がせてますます怪しく思えてくる。
「いや、知らないなあ……余分に刷ってたんじゃないか?」
「一枚だけ余分に刷ったりしません、益子課長、どういうことか説明してもらえますか?」
「ど、どういうことって言われても……知らないものは説明できないだろ?」
益子課長は落ち着きなく体をくねらせながら私に背を向けて、この場から逃げようとしている。逃げられてなるものか、と私は益子課長の前に回って出入り口に立ち塞がった。
「どうしてこんなことをしたんですか?」
「知らない、僕は何にもしてないって言ってるだろ?」
頼りなく首を振って全力で否定するけれど、益子課長が故意に抜き取ったことはもはや明白だ。
単なる出来心なのか嫌がらせなのか問い詰めるのはさて置き、まずは有田さんに連絡を取らなければ。これから本社の幹部に説明するというのに、一枚抜けているなんて有田さんが恥をかいてしまう。