思いがけずロマンチック
「体調が悪いのか? だったら今日は早退してもいい、早く帰ってゆっくり休め」
有田さんはすっかり勘違いして優しい言葉をかけてくれる。申し訳ないような情けないような腹が立つような、複雑な気持ちが絡み合って余計に苦しくなるばかり。
いつの間にか頭の中を漂っている空白がぶつかりながら弾け飛んで、どんどん広がっていく。
どうして私がこんな気分にならなきゃいけないんだろう。
有田さんがこの会社に来た理由が、社内規則を犯した罰が左遷だったというだけ。たまたま犯した規則が社内恋愛禁止だったというだけ。
それだけのことなのに、私は何を動揺しているんだろう。本当に訳が分からなくなってくる。
もう何にも聞かないでほしい。私のことなんか気にしないでほしい。どうでもいいから今はひとりにしてほしい。
空白で埋め尽くされた頭の中に投げやりな気分が生まれてくる。
「いいです、大丈夫です……すみませんでした」
一度も有田さんと目を合わせないまま席を立った。少しでも早くここから離れてしまいたくて、紙袋は放りだすように椅子の上に置き去りに。もちろん有田さんもそのままに。
だけど、有田さんは何にも言わない。どんな表情をしているのか振り返って確かめることもできないまま私は自席を離れた。
脳裏に浮かぶ有田さんをかき消しながら。