思いがけずロマンチック

『まだ他にも頼みたいことがあるんだから』

『この仕事が終わったら……でいいんだ』


笠間さんが商談の合間に言ったことがあった。


あの時から閉店の話が浮上していたのかもしれない。だからイベントが終わったら、と言ったんだ。織部さんのクライアントと同じように閉店の企画を依頼してくれようと思っていたのかもしれない。


だけど、私の手を握ったのは何故だったんだろう。


「今度の企画が終わったら閉店に向けた企画を依頼されるかもしれない」


新たな仕事の受注になるかもしれないというのに、有田さんの表情はまだ暗いまま。笠間さんは人柄も良くて、企画について無理強いすることもないから私たちにとって仕事しやすいクライアントだ。


それなのに何が引っかかっているんだろう。


「笠間さんの仕事に何か問題でもあるんですか?」

「いや、問題はないが……」


やっぱり有田さんは煮え切らない返事。有田さんらしくない態度にイライラしてくるのと入れ替わるように、胸の痛みなどどこかへ消えてしまっていた。



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