思いがけずロマンチック

茜口駅前の大通りから一筋通りを入った静かな街並みの中、こじんまりとした可愛らしい建物が見えてくる。南欧風のテラコッタの屋根が徐々に青さを失っていく夕空の色に溶けこんでしまいそう。


この店がなくなるなんて考えられない。


仕事をさせてもらった贔屓にしているのではなく、これからもお気に入りの店にしていきたいと思っていたのに。


「来週のイベントのことで再確認をさせてください」


話し始めると笠間さんの表情はどこか悲しそうにも見えた。


やはり閉店は本意ではないのだろう。私の説明に丁寧に頷いてくれるけれど、時おり目を伏せて心ここにあらずといった顔をする。


「ありがとう、あとは唐津さんにお任せするよ」


ひと通り話し終えた私に笠間さんは柔らかな笑みを返してくれた。


それでも笠間さん自身から閉店の話を持ち出すかもしれない、と念のため心の準備はしているつもり。いつ話があってもいいように覚悟を決めて。


「何かご質問や疑問点はありませんか?」

「うん、何にも思いつかないなぁ……」


笠間さんは常に笑顔を絶やさない。余計なことを悟られないようにと気を遣っているようにも見えてくる。




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