思いがけずロマンチック
「前日の準備は閉店後になりますので慌ただしくなると思いますが、会場の配置はこちらで段取りしますのでよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
笠間さんとふたり、同時に頭を下げた後に目が合ったから思わず笑ってしまった。
こんな時、有田さんは笑ったりしないに違いない。きっと険しい顔で私を睨んで、気に入らないと言いたげな顔をするんだ。
「唐津さん、ずっと話したかったことがあるんだ」
穏やかな声だというのに全身に緊張が走った。
笠間さんは懸命に言葉を選んでいるのか、一度口を噤んで遠い目をする。心構えしているつもりだったのに膨らんでいく緊張感がだんだん鼓動が速めていく。
早く話してくれないと胸が痛くてたまらない。
「何でしょう?」
平静を装いながら笑顔で返した。
「実は、店を閉めることにしたんだ」
覚悟していたけれど笠間さんの口から零れた言葉の破壊力は予想外に大きい。
「どうして……ですか?」
とうに理由は知っているのに、なんてバカな質問をしまったんだろう。