思いがけずロマンチック

「こちらこそ気が付かなくて悪かったね、行く前に連絡を入れるべきだったのにいきなり事務所に押しかけてしまって……」

「私が悪いんです、笠間さんの店に行くだなんて嘘ついて出て行ってたから、すみませんでした」


背中越しに事務所のドアが勢いよく開く音が響いた。


大股で歩いてくる足音に振り向くと、バッグを抱えた織部さんがにこりと笑って手を挙げた。これから商談に行くのだろう。スマホを構えたまま笑って返した。


笠間さんと電話しながら階段を上って屋上へと向かうことにした。


階段を登り切って深呼吸、幸い笠間さんには気づかれていないようだ。
ひそかに息を整えながらゆっくりと屋上のドアへと歩いていく。ずっしりとした頑丈なドアの上部のすりガラスからは、屋上に注ぐ眩い日差しが窺える。


「昨日は港ホテルに行ってたんです、有田さんの歓迎会の打ち合わせのために……それで笠間さんのところに行くと嘘をついてしまって」

「そうだったんだ……気を遣って正直には言いにくいね。歓迎会はいつ?」

「来週の土曜日に昼食会という形で行うことになっているんです」


答えながらドアを押し開いた。


一瞬視界が真っ白に染まって思わず目を瞑った。俯きながらそっと目を開けていくと屋上の床の灰色と、顔を上げていくにつれて真っ青な空が映り込む。



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