思いがけずロマンチック
あっという間に時間は過ぎていた。そろそろ有田さんに挨拶をお願いしなければいけない時間だ。
織部さんや営業陣と談笑している有田さんの元へと向かった。近くで見ると有田さんも結構お酒を飲んだらしく、いつもよりもずっと柔らかい表情をしている。
有田さんに声をかけようとした時、大きくドアが開くのが見えた。
開け放たれたドアの向こうから、知らない男性がずんずんと遠慮なく入ってくる。彼が本社の偉い人たちだとわかったのは後ろに益子課長の姿が見えたから。
ゆっくりと立ち上がった有田さんの顔からは笑みが消えて硬い表情に変わっていた。
益子課長は私を一瞥しただけで知らん顔。男性にマイクを渡して一歩下がってにやにやしながら会場を見回している。
「この度はお招き頂きありがとうございます、本社営業部で部長をしております清水です」
にこやかな笑顔とは似つかわしくない威圧感のある低音が会場を包み込む。笑っているのか怒っているのかわからなくなるような強い口調に圧されて、会場の誰もが口を閉ざしてしまった。