思いがけずロマンチック
私も有田さんの言葉が理解できない。退くと言いながらも『もう一度』とはどういう意味なのか。
会場に向けられた有田さんの目は輝いていて、自信に満ちている。
「ディアメイツをルーチェ・クリエイトから独立させます」
有田さんが言い切って間もなく、会場から大きな拍手が起こった。
拍手とともに立ち上がったのは織部さん。ぐるりと皆を見渡すと、促された会場全体が大きな拍手に包み込まれていく。
鳴り止まない拍手の渦に圧されるように、清水部長と益子課長は足速に会場を出て行った。
『諦めるな』と言った有田さんの声が蘇る。
きっと、あの言葉は今日のためだったんだと思えた。
だけど、これから私たちを待っているのは夢と希望だけではない。少なからずリスクを伴い、決して平坦な道ではないことを有田さんは丁寧に話してくれた。
独立のことは織部さんを始め営業部の一部の人しか知らされていなかったという。本社に悟られないように内密に確実に準備を進めてきたらしい。
いつの間にか千夏さんと織部さんは並んで座り、顔を見合わせて笑い合っている。
もう心配しなくても大丈夫。私たちは良い方向に向かって進んでいくはずだ。
歓迎会は独立に向けた決起集会に変わり、無事に閉会した。