思いがけずロマンチック

ふと浮かんだ言葉を一瞬で不安へと変えたのは、視界に入った人影。背筋を伸ばして、堂々としたキレのある歩き方は間違いなく彼女だ。


あれから三時間は経っている。ずっと待っていたのか、待ち伏せしていたのかと考えると怖くてたまらない。


こっちに来ないで、と必死に願っても彼女に届くわけない。


彼女は有田さん前で足を止めて、ゆっくりと顎を上げた。


「新会社を立ち上げるって本当?」

「君には関係ない」


有田さんは冷たい口調で突き放す。


そんなことで彼女が引き下がるはずもなく、彼女の視線は私へと突き刺さった。冷ややかな彼女の瞳に映った私は、まるで蛇に睨まれた蛙。


どうして新会社のことを知っているのか、聞き返したくて堪らないのに何も言えない。そんな私を見透かすように彼女は目を細めた。


「何のためか知らないけれど、新会社なんてどうかしてると思わない?」


彼女は吐き捨てて、再び有田さんへと向き直る。彼女が問いかけたのは私なのか、有田さんなのか真意はわからないまま。


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