思いがけずロマンチック

彼女の後ろの方に見えるのは九谷君。ソファにゆったりと体を預けて、こっちを見ているけれど表情までは読み取れない。


唯一わかることは、彼女の暴走を止める気なんてないことだけ。


気がついたら自然に足が動いていた。背中越しに彼女の声が聞こえたような気がしたけれど構うものか。もう止まれない。頭の中には、真っ直ぐ九谷君の元へと向かうことしかなかった。


「どうして黙って見てるの? あなたの彼女なら止めてよ」


九谷君の前に立ち、ひと息吸う間もなく言いきった。怒るつもりはなかったけれど、言い終えた語気は思った以上に強さを帯びている。
これではまるで喧嘩を売ってると思われても仕方ない。


「俺の婚約者だ、だからこそ溜まったものは吐き出すべきだろう? 彼女に後悔させたくないからね」


ふっと鼻であしらって、九谷君は目を逸らした。
私と言い争いをする気はないと、明らかにわかるような冷めた口調と表情で。勝気で私を見下していた頃の九谷君とは違う。

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