ルルー工房の月曜の午後
あたしはテーブルの上の果物ナイフを右手に持つと、左手で髪を余さず掴んで持ち上げる。
そして一つ息を吸うと、「バイバイ」と呟いて、一気にそれを切り落とした。
ドサッ、と、髪にしては重い音を立てて、床に赤い髪が広がる。
あたしのアネモネ色の髪。
くるくるでうねうねで、言うことをぜんぜん聞いてくれない、強情なあたしの髪。
メイドたちは赤い髪なんてみっともないって馬鹿にするけれど、あたしは好きだった。
だって、お父様とお母様が褒めてくれた髪だもの。
腰まであった髪がなくなった頭はびっくりするほど軽い。
違和感はあるけど、まるで自由の象徴のようなこの軽さは嫌いじゃない。
すっきりした頭にベージュのキャスケットをかぶると、もうどうしたって女の子には見えない。
それからあたしは、クローゼットから用意してあった手紙を取り出した。