ルルー工房の月曜の午後
ⅳ.
ⅳ.


「……迷った」


往来の真ん中で立ち尽くして、ベルはつぶやいた。


ここがどこかもわからない。

似たような建物ばかりの道が入り組んでいて、来た道を戻ろうにも、もう自分がどこから来たかすらわからない。

リュカにもらった地図の通りに進んでいたつもりで、どこで間違えたのかもわからない。


とりあえず誰かをつかまえて道を訊こう。

声をかけても迷惑じゃなさそうな人はいないだろうか、と、きょろきょろとあたりを見回していると。


「……あ、あんた!」


ベルと目の合った一人の男が、ベルを指さして声を上げた。


――レイエ工房の男だった。


「偶然だな。あんた、入れてもらえる工房は見つかったのか?」


男はそう言って、「まぁでもまだだろうな」と、人を小馬鹿にしたような笑みをベルに向ける。


ベルは首を横に振る。


「いえ。見つかりましたよ」


「え!?」


「ルルー工房に徒弟として迎えていただきました」



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