ルルー工房の月曜の午後



男は心底驚いたように目を大きく見張った。


「それ、本当か?」


「はい」


ベルが頷くと、男はなかば放心したような顔でベルをまじまじと見つめる。


「どうかしましたか?」と、ベルが尋ねても、男は答えない。


しばらくの沈黙の後。


「…………それで、あんたはこんなところでなにしてんの?」


唐突に、男が尋ねた。


不自然な流れに困惑しながらも、ベルは「サン・マテュー教会に行こうとしてるんです」と答える。


「親方が今、サン・マテュー教会にいるので、仕事場を見に行こうと思って。でも道に迷ってしまって……」


困ったように笑ってベルが言う。

すると男はすこし考え込むように目線を下げ、しかしすぐに目を上げると。


「なら、俺が案内してやろうか」


ベルを見下ろして、そう言った。


「え、いいんですか!?」


「うん。時間ならあるし、俺もルルーさんの絵を見に行きたい」


願ってもない申し出にベルは瞳を輝かせて、「それなら、お願いします!」と、勢いよく男に頭を下げた。



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