強引なカレの甘い束縛


「それにしても、大きな家ばかりで圧倒されるな」

この辺りは高級住宅街と呼ばれるだけあって大きな家が多い。

ちらりと視線を動かし素敵な外観に和みながら。ナビから聞こえる声に案内され、ゆっくりと車を走らせる。

「なあ、七瀬。俺がもし」

「え? だから、何? もう少し大きな声で言ってよ」

「いや、まいっか」

「陽太?」

「今はいい。大原部長の家に行く意味もちゃんとわかってないみたいだしな」

ひとりで納得するようにつぶやく陽太の言葉がうまく聞き取れなくて気になるけれど、初めての場所を走っているせいで聞き返せない。

今朝陽太の家まで車で迎えに行って、そのまま一時間くらい運転を続けている。

やっぱり疲れているのかもしれない。

「疲れただろう? 帰りは俺が運転するから」

「気にしなくていいよ。陽太はビールでもなんでも飲んでいいから楽しんでよ。私はアルコールがダメな体質だから、今日は帰りもちゃんと送ってあげる」

「送ってあげるって……。じゃ、ルイルイのフルーツタルトにシュークリームを追加する」

「あ、ありがとう。でも、シュークリームは開店と同時に売り切れるって聞くから、頑張ってね」

ルイルイのシュークリームは一日限定三〇個と決まっていて、なかなか手に入らないのだ。フルーツタルト以上に手に入れるのが難しい商品のことをどうして知っているんだろう。



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