強引なカレの甘い束縛


「じゃ、早起きしてふたりで並ぼうな」

「は? 陽太が並んでくれるんじゃないの?」

「スイーツの店に男の俺にひとりで並べっていうのか?」

そう言われても。

長時間並んでまで手に入れたいものなんてこれまでなかったし。

ルイルイのシュークリームにそれだけの価値があるのかどうかもよくわからないし。

そんな私の気持ちを見透かすように、陽太は言葉を続ける。

「シュークリームを手に入れて、おいしいモーニングでも食べよう。たまごサンドで有名なカフェが店の向かいにあるんだ」

「良く知ってるね。……彼女といろいろ行ったんでしょ」

するりとこぼれた言葉とは裏腹に、私の心は重く、ちくりと痛む。

「ここ何年も俺に彼女がいないって知ってるだろ? 毎日仕事に追われてそれどころじゃないし。というわけで、早速明日の朝、並ぼうな。はい、決まり」

「き、決まりって勝手に決めないでよ」

「七瀬に任せるといつまでも決まらないから俺が決める。明日は俺が車出してやるから早起きして待ってろよ。あ、そこを右に曲がったら部長の家だから」

「ちょっと。本当にいつも勝手なんだから、もう」

強引に決める陽太に文句を言いながらも、明日も陽太に会えることに心は弾む。

けれど決してその気持ちを見せないように口元を引き締めて、陽太の指示通り右折すると、目の前には大きな家がどんと現れた。


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