強引なカレの甘い束縛
あの日、陽太は私の家で、私に好きだと気持ちを伝えてくれた後、
『バーベキューに行ったんだから、もう逃げられない。俺に愛されて結婚する、そして幸せになるから、楽しみにしておけよ』
そう言って私を抱きしめた。
陽太に好きだと言われ、隠していた気持ちを私もさらけ出し、陽太が好きだと、口にした。
五年間続いた、甘さほどほどの微妙な関係が一気に変わる瞬間。
私の状況は何も変わっていない、そして変えるつもりもないというのに。
『陽太が好きなの。ずっと好きだった』
そう言って、私を抱きしめる陽太のシャツを握りしめた。
午後からの部内会議で必要な資料をコピーしていると、隣の課で事務を担当している稲生さんが声をかけてきた。
第二グループからも資料が配布されると聞いていたから、稲生さんもコピーをしなければならないのかもしれない。
「あ、あと三十枚だからもう少し待ってもらえる? ごめんね」
「いえ、大丈夫です。それほど多くないので」
稲生さんは遠慮がちに私の隣りに並ぶと、手にしていた原稿に視線を落とした。
肩までのさらりとした黒髪が揺れて、頬に影を落とす。大きな瞳を縁取るまつ毛はまばたきするたびにぱたぱた音を立てるんじゃないかと思うくらい長い。
彼女の同期はきれいな子が多いと評判だけど、稲生さんはその筆頭だな。