強引なカレの甘い束縛
「あ、あの……?」
稲生さんが、戸惑いがちに私を見ている。というより、きれいな稲生さんをうらやましげに見ている私に困っているというのが正確。
「ご、ごめんね。その長いまつ毛に見惚れちゃった。マスカラいらずの贅沢なまつ毛だね」
「そんなことないんです。不器用なので化粧が下手で、必要最低限のメイクしかできなくて」
「私もマスカラはしないし必要最低限メイクだけど、それは単に面倒くさいからだけだもん。誰かが毎日私にメイクをしてくれて稲生さんみたいにパチパチまつ毛になれるなら喜んでお願いするんだけどな。うらやましい」
くすくす笑いながら、稲生さんの顔を覗き込むと、彼女の頬がほんのり赤くなった。
その顔も可愛らしくて更に見つめてしまう。
女の私でも目が離せないんだから、男性なら尚更どきどきするんだろうな。
ちょうどそのときコピーが終わり、私は急いでそれを集めた。
「お待たせしてごめんなさい。コピーが多かったら手伝おうか?」
「大丈夫です。追加の二枚だけなので、すぐに終わります」
「そう? 第二の課長たちってのんびりしてるから原稿の仕上がりが遅いのよね。私からも今度言っておくね。会議の前日までに原稿は提出しなきゃいけないってわかってないみたいだし」
隣りのグループだとはいえ、同じ部署で働いていると、たいていの部長や課長とも気心がしれている。
稲生さんもそのうち私のようにたくましくなるにちがい……ううん、きっと稲生さんはいつまでもこのままかわいらしい女性で周囲のわがままにもにこにこと対応するんだろうな。