強引なカレの甘い束縛
「じゃ、お待たせしました。会議の準備で何かあったら声をかけてね、手伝うから」
「はい、ありがとうございます」
部内会議の準備は稲生さんをはじめ入社二年目の男女が行うことになっている。
とはいっても五十人を超える出席者の席を調えるには結構な時間がかかるので、特別に配るものなどあれば私や他の社員も手伝っている。
今日はとくに何もないはずだから、稲生さんたちだけでも大丈夫かな、と思いながらこの場を離れようとすると。
「あの、萩尾さん……」
背を向けた私を追いかけるように、稲生さんの声が響いた。
やっぱり手伝って欲しいのかと振り返ると、原稿を両手で握った彼女が私をまっすぐ見ている。
「あの、萩尾さんは、この間のバーベキューに行ったと聞いたんですが……」
「え?」
まさかそのことを聞かれるとは思っていなくて、おかしな声が出た。
「すみません、萩尾さんと春川さんが一緒に行ったと聞いたので、あの」
「うん。陽太と一緒に大原部長のバーベキューに行ったの。あっという間にそのことが社内で広まったからびっくりしてるんだけど」
「あ、そうなんですか」
「ん? それがどうかした?」
「いえ、なんでもありません。引き止めてすみません」