強引なカレの甘い束縛


長く付き合っていた彼女との別れに何も思わなかったわけはない。

悲しかっただろうし、できればやり直したい気持ちもあったに違いないけれど、陽太は彼女との別れを選んだ。

そんな陽太のつらい時間、私は同期として彼の近くにいた。

彼女との別れ以来、さらに仕事に対する熱意を強くした陽太は少しでも知識を増やそうともがき、あがいていた。

そんなある日、仕事でミスを繰り返した陽太が「給料泥棒だよな、俺」と言って落ち込む姿に私はとうとう陥落。

体の奥から何かがせりあがってくるような、大きな感情のうねりを感じた。

それまで我慢し否定していた自分の恋心を自覚した瞬間だった。

動きを止めた私に気づいた陽太は、その言葉を取り消すように笑いながら「冗談冗談」と言って体を揺らしたけれど、お酒に強い陽太が珍しく酔ったあの日、砂川さんの弟の輝さんが経営するダイニングバー『マカロン』に明け方まで一緒にいた。

長身の体がやけに小さく見え、おまけにとても悲しげで、ひとりにしておくことなんてできなかった。





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