強引なカレの甘い束縛
「……で、加納さんがどうしたの? また、お孫さん自慢でも始まった?」
しんみりとした気持ちを振り払うように私は明るい声を出した。
『あー、言うのも面倒なんだけど』
姉さんは明らかに投げやりだとわかる声で話を続けた。
『加納さんのお孫さん自慢は継続中だから、たっぷり聞かされたんだけど。今回の話は違うのよ。父さんと母さんが事故に遭う直前に出版社に送った荷物の一部が見つかって、それを持ってきてくれたの』
「え、また? 今回は何が見つかったの?」
『だよね、いつまであのふたりの置き土産に右往左往させられるんだろう。生きていたときも好き勝手にしていたのに、死んでもまだ私たちに面倒ばっかりで嫌になる』
大きくため息をついた姉さんは、それでも父さんと母さんへの想いを笑いながら口にする。
私同様、時間が経った今だからこそ、穏やかに振り返ることもできるのだろう。
『でね、その荷物っていうのがあの人たちらしくて笑えるんだけど。ハワイに移住する計画書だったのよ。まだ何も現実には動いてなかったようだけど、あの事故に遭わなかったら一年以内に仕事を引退してハワイに引っ越していたかもしれない』
「ハワイ……」
『そう。常夏のハワイ。まあ、年を重ねてのんびりと暮らすにはいい場所かもしれないけど、放浪癖のあるふたりが海外に行ってもすぐにまた戻ってくるか他に行ってしまいそうでしょ。まあ、その計画書とハワイのガイドブックがたくさん見つかったんだって。我が家で保管しておくけど、また今度見においでよ』
姉さんの広い家には両親が遺したあらゆるものが保管されていて、年々それは増え続けている。
今回の物もきっと、その中のひとつとして部屋の片隅に置かれるのだろう。