強引なカレの甘い束縛
「陽太、いい加減に手伝ってくれよ。萩尾さんと仲良くするなら明日にしてくれ」
その声にはっと振り向くと、私と陽太を見ている視線がいくつもあることに気づいた。
「あ、あ……仲良くってそんなことないし」
慌てて陽太との間に距離をとり意味なく笑っても、周囲からの視線が生ぬるいということに変わりはない。
私が居心地の悪さと照れくささを感じる一方で、陽太は何も感じていないのか、平気な顔で篠山君に声をかけている。
「何を手伝えばいいんだ? 薫さんに聞いて食材を運んでこようか?」
「それは女性陣に頼むからいい。とりあえずそっちのコンロの火をもう少し大きくしてくれ」
「りょーかい」
陽太は私の手首を掴んだまま、それをとくに隠すことなく話している。
「陽太、いい加減この手を離してほしいんだけど」
人のことを鈍感だとか鈍いだとか言っているくせに、周囲からの視線に無頓着すぎる。大原部長ですら強面の顔を崩して笑っている。
陽太の手を振りほどこうと何度か試してみるけれど、意外に強く掴まれているようで離れない。
「陽太……」
戸惑った声でそうつぶやくと、陽太は大きな笑顔を見せた。