強引なカレの甘い束縛
私を傷つけるあらゆるものから守ってくれる真綿の箱のような、この家からも出なくてはいけないということ。
そう考えたと同時に、ほんの少し、胸が痛んだ。
姉さんや忍さん、誰もが口にしないうえに、私も忘れた振りで過ごしているけれど、陽太が私をこうして抱きしめ守ってくれるのなら、それはもうできない。
忘れていない。
苦しみも痛みもちゃんと覚えている。
私が陽太に寄り添いたければ、ちゃんとその過去を伝えて、そして。
「陽太、手伝ってほしい」
声が震えるのは、どうしようもない。
それよりも、ちゃんと伝えられるのか、それがどうしようもなく気になる。
私は、胸の中に膨らみ始めた不安を押しやるように、口を開いた。
今言わなければ、二度と勇気が出ないような気がする。
「ねえ、陽太。大学生の時、私が入院したことを、話したことあったかな」
なんの脈絡もなく話し始めた私に、陽太の体が一瞬震えた。
私の声の堅さに気づいたのだろう。
そして、目を閉じていても、陽太が視線を私に向けたのがわかる。
「高校時代に笑えなくなったことは、聞いたけど、大学時代のことは聞いてない、と思う」
「そうか……。楽しい話じゃないけど、話していいかな」
「いいけど、どうした、突然」
気遣うような陽太の声に、申し訳なくなる。
できることなら話したくはない。
今の私はあの頃よりも強くなったと思うけれど、思い返せば心の中には重い何かが溢れてくる。