強引なカレの甘い束縛
それでも、陽太がこうして婚約指輪を用意しようと動いてくれ、そのことを照れながらも嬉しそうに話す姿を見れば、私の気持ちを話さないわけにはいかない。
「この部屋を用意してもらって、大学生活を楽しんで。三回生の……あの川沿いの桜が満開の頃だったから、春ごろだったと思う。姉さんが、就職活動用のスーツとか鞄とか一式用意してくれたの。姉さんたち家族が贔屓にしている百貨店の外商さんがこの家に来てね、色々見せてくれて、もちろん姉さんも一緒だったんだけど。
就職活動用のスーツが二着とその他もろもろ。しめて百万円」
「は? 百万? その外商さん、どれだけ買わせたんだよ」
「だよね、びっくりするよね。私もゼロがひとつ多いんじゃないかって驚いた。姉さんにスーツは一着でいいし、靴やカバンもノーブランドでって食い下がったんだけど、姉さんも忍さんも、遠慮しなくていいって言って……」
「それで百万? さすが、大企業の経営者一族。太っ腹だな」
感心しているとも、呆れているともとれる陽太の言葉。
それは、当時の私の思いと同じだ。
「まだ大学生だよ、ただでさえこの家に住まわせてもらって、経済的な面倒もみてもらっているのに。就活用のスーツにそんな大金を遣わせてしまって、申し訳なくて」
閉じていた目に、さらにぎゅっと力を込めた。