強引なカレの甘い束縛
「唇を噛んで傷つけるくらいなら、俺とキスでもしてろ」
そして、軽いキスをもう一度。
「内定式とか入社式でも、そのお高いスーツを着ていたのか?」
「あ、うん、そうだけど」
当時を振り返るように呟いた陽太に、慌てて答えた。
キスの余韻がまだまだ消えそうもなく、こんなにドキドキしているというのに、陽太の顔には余裕が見えて、ちょっとむかついた。
「で、そのお高いスーツがどうしたの?」
「ああ。やたら綺麗な女がいるなと思って……あ、七瀬のことだぞ。ちらちら見てたんだけどさ、仕立てのいいスーツを着てるし、靴もカバンも一目で有名ブランドのものだってわかるし。どこのお嬢様だって、男の間で結構な話題になってたからな」
「は……?」
「そう、お嬢様。立ち姿は綺麗だし、座っても背筋が伸びてるし。これだけ整った顔だからな、注目度はかなり高かった」
「そんな……全然感じなかったけど」
「だろうな。遠目から見ればお嬢様だけど、話せば真面目で素直な普通の女の子。お昼も節約のためだっていってお弁当を作る時もあれば、スーパーのタイムセールがあるからって理由で就業時間が過ぎれば早々に帰る日もある。まあ、それも七瀬の魅力だけどな」
くくっと笑いながら、陽太が肩を揺らす。
「同期の結束が固まって、親しくなるにつれて、七瀬は見た目とは違うってみんな思ったんだろうな。男と付き合うつもりはまるでなさそうで、壁もあったし。
男どもは七瀬を狙うどころか、守ってやろうっていう体制に変わった。おまけに、俺が七瀬を好きだって公言していたからな、誰も手を出そうとしなかった」
「公言……って、いつ?」