強引なカレの甘い束縛


総額百万円以上の就職活動セットが音羽家によって購入完了。

その時のスーツが、陽太が言っていた『仕立てのいいスーツ』だ。

「リビングにラックがふたつ登場して、そこにスーツが三十着くらいかけてあって。音羽家の人たちは慣れてるんだろうけど、私はもちろん初めてで、外商の意味すら知らなかったし。あっという間に私は着せ替え人形にされて、その中で私に似合うというスーツが決められて、断れないし、返品なんかしちゃうと音羽家に恥をかかせてしまうかなとか考えてどうしようもなかった」

「へえ。俺も、外商さんなんて縁がないけど、さすが音羽家だな。今度機会があったら見てみたいな」

「……だめだよ、そんなこと言ったら。すぐに担当さんに連絡をいれてなんでも持ってきてもらうんだから」

「へえ。あ、でも、大企業の経営者って、身の安全のためにも、家に来てもらったほうがいいんじゃないのか? 百貨店に出向くより、家の方が気楽に選べるし。それに、お高いものを買ってるところをマスコミに撮られて下手な記事にでもされるのも困るしな」

「あ……そうだね。忍さんの過去の女性関係とか、ありもしないことを色々書かれたことがあるって姉さんが怒ったこともあった」

「だろ? お金持ちにはお金持ちの悩みもあるだろうし。そこに七瀬を巻き込みたくなかったのもあって、ここに外商さんを呼んだのかもな」

お互いの体を抱き合うようにソファに並んで座り、手をつないでいると、時間がゆっくり流れているようで心地いい。



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