強引なカレの甘い束縛
「そういえば、私の通っていた大学は入学式と卒業式は振袖の子が多くて有名なの。男子はスーツなんだけど。もちろん、大学がレンタル業者さんを紹介してくれることも多いんだけど、私は、その時も音羽家にあった豪華な振袖を着させてもらって入学式に出席。成人式も卒業式も、それこそ音羽家代々の由緒ある着物を着せてもらって、汚したらどうしようってびくびくしてた」
「へえ、きっと綺麗な七瀬だったんだろうな。俺も、大学時代に七瀬に会いたかったよ。その時の写真あるだろ? あとで見せてよ」
「うん……わかった」
「……で?」
その続きを促すように、陽太の軽い声が響く。
「うん。……話は戻るけど、私、スーツを着て、鏡に全身を映した時にあまりにもぴったりと似合い過ぎていて驚いたの。音羽家のみんなであーでもないこーでもないって話し合いながら決めてくれたスーツだけど、最終的には姉さんが私にはこれが一番似合うって言って決めたんだけど。姉さんが私のことをあまりにもわかり過ぎていてびっくりして……靴だって履き心地が抜群だった」
「そりゃ、姉妹だから、当然じゃないのか?」
「もちろんそうだけど。私の好みにも合ってるし、着心地も最高で。姉さんってすごすぎるって思いながら……ふと部屋を見回したら、部屋にある物のほとんどが姉さんが用意したものだって気づいて」
淡々と話す私の声が、次第に小さくなっていく。
陽太の目を見ながら話しているのに、視線の向こう側には当時の驚いて呆然としている自分の姿が浮かぶ。
新しいスーツを着て、心もとなく立ち尽くす自分の姿。
全身を映す鏡には、青白く生気のない顔。
口もとは、微かに震えていた。