強引なカレの甘い束縛
「それで、あの日。久々に訪ねた両親と住んでた家には、当然だけど、誰かが住んでいたの。一軒家だったんだけど、庭には三輪車とか縄跳びが転がっていて、小さな子どもが住んでいるのがわかったし、リビングから漏れる光の合間から笑い声も聞こえてきたの。羨ましいなって……仲がいい家族が住んでいるんだなって思うと、父さんと母さんに会いたくなった。
あれだけ好き放題に生きて、私が何を望んでいるのかなんてちっとも考えてくれなくて、愛し合うふたりの世界が一番大切で、子どものことは二の次で……親としては失格だったあのふたりに会いたくてたまらなくなった」
「どんな親だろうが、親は親だからな」
陽太の言葉に、小さく頷いた。
そう、どんな親でも、親は親。
亡くなった両親の年齢に近づいたせいか、仕事を始めて社会の厳しさや、稼ぐことのむずかしさを知ったせいか。
当時気づかなかった両親の思いを感じる機会が幾度もあった。
姉さんや私への愛情ゆえに受けた仕事もあると知ったことは、それまで私が築いていた壁に小さな風穴を開けるきっかけにもなった。
本意ではない仕事を受け、高額の報酬と引き換えに描いた絵もあると、姉さんが教えてくれた。
それは私を大学に進学させるための費用だったらしい。
自分たちの思うがままに動き、絵を描いていただけの、身勝手な両親を恨む気持ちもあった。
けれどそれは、まだ子どもだった私に見えていた、両親のほんの一部分にすぎなかったのだ。
親は親。
それを知って以降、不安定な感情の行き場をどこにも見出せずにいた私。
周囲の人に気取られないよう変わらぬ態度で振る舞っていたストレスも重なったのだろう。