強引なカレの甘い束縛
姉さんをはじめ、音羽家のみなさんにお世話になっているだけの自分が異質なものだと感じるようになった。
そして、姉さんたちの配慮によって住まわせてもらっているマンションが、柔らかな檻のように思えて怖くなった。
父さんと母さんから離れて自由になったつもりでいたけれど、ひとつの自由を得て、そして、姉さんという新しい保護者のもとで始まった偽りの自由。
自分が身につけるもの、手元にあるもの、そして生活の全てが姉さんによって作り出されたものだとようやく気づいた。
百万円もの大金をかけて準備された就職活動。
当時、音羽家が経営する会社への就職を打診されていた私は、それもいいかなと安易に考えていたけれど、それすら姉さんの意志のみによって促された未来のような気がして、震えた。
自分の立ち位置が、見えなくなった。
それまで目を逸らしていたに違いない自分の弱さと、環境を変えて生きていくことへの抵抗が混在した重すぎる現実。
「そのあと、近くの公園のベンチで色々思い出したの。父さんと母さんがふたりで作り上げる世界に私も姉さんも入れなくて、寂しかったこと。友達のお母さんはいつ遊びに行っても私にも優しくしてくれるしご飯を用意してくれたり。制服のボタンが取れそうなときには付け直してくれたし。そんな当たり前が羨ましくてたまらなかった。だけど、そんな寂しさを貯め込む余裕もないほど引っ越しを繰り返していたから、心は麻痺していたの」
次第に早口になる私の言葉を、陽太が優しく遮った。
「七瀬、ゆっくりでいいんだぞ。それに、つらいことは無理して言わなくていい」
私を気遣う陽太に、私は何度か首を横に振った。