強引なカレの甘い束縛
「忍さんは、結婚する前から七瀬とお姉さんの関係を不安に思っていたらしい。たとえご両親が亡くなって、姉妹ふたりきりだとしても、お姉さんの七瀬への束縛は半端なものじゃないからな」
陽太は、一語一語、私の感情の揺れを確認しているように、低い声で私に言い聞かせる。
しばらくの間黙り込んでいるのは、その揺れが収まるのを待っているのだろう。
口を開くタイミングを図っているのか、私の表情を探っている。
「七瀬が高校を辞めさせられそうになって、笑えなくなったのがきっかけで。お姉さんは七瀬を守るのは自分しかいないって、思い込んでる」
「そう……だね」
「もう少し早く、ご両親から七瀬を引き取っていれば、高校を辞めろと言われることもなかっただろうし、七瀬が心を病むこともなかった。修学旅行にもなんの悩みもなく行けたはずだって、お姉さんは自分を責めてるって……七瀬はもう、気づいてるよな」
陽太はそっと私の体を離し、私の頬をゆっくりと撫でる。
私が笑えなくなったのは姉さんの責任じゃないと何度言っても、姉さんはいつも自分のせいだと笑う。
父さんと母さんの関心は絵とお互いのことだけで、娘である私と姉さんへの親ごころは希薄だった。
子育てを放棄したわけではないけれど、それを楽しむことはなかったし、ふたりの日常生活の中にしめる私と姉さんの割合は限りなく小さなものだった。
それでも初めての子どもだった姉さんを育てることは何もかもが新鮮で、それなりに時間と手をかけてくれたらしい。