強引なカレの甘い束縛


「お姉さんが七瀬を大切に想う気持ちに嘘はないし、家族なら当然の感情だけど。いつまでも自分の目が届く場所に閉じ込めるのは、どうかと思う」

「閉じ込める?」

「ああ。この家、七瀬を心配しすぎるお姉さんを安心させるために忍さんが用意したものらしい。七瀬の心がまた不安定になるかもしれないからって、お姉さんは七瀬の近くに住まないと結婚できないって忍さんに言ったんだ」

「え……」

たしかに、姉さんは私の大学卒業までは結婚しないと言い張っていたけど。

結局は私がこのマンションに住み、音羽家の援助を素直に受け入れるのならという条件で結婚した。

私が通う大学へも近いというのも理由のひとつで、忍さんは、もしも私が気を遣ってしまうのなら、断ってもいいと言ってくれた。

音羽家のマンションに住まなくても、私はもう家族の一員だから、その状況に応じて相談にのるし後押しをしてあげるとも、励ましてくれたほど。

だけど、私もこのマンションが気に入って、住まわせてもらうだけでそれ以外の援助は遠慮するという条件でここに住むことにしたけれど。

忍さんは無理にこのマンションをすすめることはなかったのに、姉さんは違ったのだろうか。

そんな私の戸惑いに、陽太は気づき、安心させるように首を横に振った。

「七瀬が気に病むことはないんだ。お姉さんは、二度と七瀬を傷つけたくないと思って、そのことに縛られていたんだよ」

「縛られていた?」

「そう。ご両親の自由奔放な人生に振り回されて限界を超えて。とうとう感情を出せなくなった七瀬を見て、お姉さんは後悔したんだ。やっぱり私がついてなきゃ、七瀬は幸せになれないんだって……これは、忍さんから聞いた」

重い内容に比べて陽太の口ぶりは軽く、口元には笑みも浮かんでいるけれど、その目はやはり真剣だ。




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