強引なカレの甘い束縛
来週の異動についての文章に目を通しながら、心がざわざわとするのを感じた。
同じ場所で、同じことをしながら安穏とした日々を過ごす。
それは私が生きていくうえでの大きな目標であり、指針でもある。
決して刺激を求めず変化が訪れないよう、毎日こつこつとその努力をつづけていたけれど、今回の異動の話はそんな私に大きな刺激を与えた。
そしてその刺激は、決して私を落ち込ませるようなものではなく、逆に、新しい仕事への期待というこれまでにはなかった感情を生み出す呼び水だ。
大原部長がこうして私に話をするという時点で、私の異動はほぼ決定されたことなのだろう。
会社員がそれを断ることはほぼ不可能だ。
勤務地域の変化を伴わない、本社内での異動の場合、その辞令には従わなければならない。
「仕事の幅を広げながらシステム開発の勉強を続けるのも悪くないぞ」
大原部長は、私の不安な気持ちを見透かしたようにそう言ってくれた。
「大丈夫、です。多分」
入社して初めての大きな変化は、これまでの臆病すぎる私自身を変えてくれる重要な役割を果たしてくれそうだ。
現状維持を意識し過ぎていたのはきっと、自分への甘えと狡さ。
それに気づかせてくれたきっかけは今回の異動の話であり、私に変化を促したのは、陽太だ。