強引なカレの甘い束縛

「そりゃまた、急に動いたな」

「え?」

「七瀬を可愛がってる大原部長のことだから、もう少しごねるかと思ってたけど、案外潔く決めたんだな」

「陽太?」

ビールを飲み干し満足そうにひと息ついた陽太は、「これで下準備はほぼ完了ってことか」と呟くと、目の前の料理に箸をのばした。

私の秘書課への異動が決まりそうだと話しても驚く様子はなく、陽太は落ち着いた様子で目の前に並ぶ輝さんの手料理に舌鼓をうっている。

たまたま同じタイミングで仕事を終えた私たちは、今日もまた『マカロン』に立ち寄った。

カウンター席に並び、会議室での〝大原部長のひとりごと〟を陽太に伝えながら、元山君の様子や稲生さんに対する大原部長の期待値の高さなどを話す。

そのことについても、陽太が鋭く反応することはなく、あらかじめ予想していたように落ち着いている。

「陽太が参加しているプロジェクトとは別に、新しいプロジェクトが発足するの?」

はっきりとした答えが返ってくることはないだろうと思いながらそう聞いてみると。

「うーん。まあ、そのあたりは時がくればわかるっていうことしか言えないんだよな」

陽太は困った顔でそう言いながらも、目は笑っている。


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